2011年に「馬が本来の力で走ることを妨げた」「報酬目的で内部情報を流した」として12年間の騎乗処分を受けたグレッグ・フェアリーが、BHA(英国競馬統括機関)のライセンス委員会から許可を得て、近くレース騎乗に復帰できることが発表されました。
見習いチャンピオンから一転、英国競馬界からの追放

スコットランド出身のG.フェアリーは現在37歳。
2007年に見習いチャンピオン騎手となり、翌年には英G2「ジムクラックステークス」を勝利。英国内だけで381勝をあげ、2010年には独G1「ダルマイヤー大賞」を制するなど、将来を嘱望された若手騎手でした。
しかし2009年にウルヴァーハンプトン競馬場で騎乗馬の能力を発揮させず意図的に敗退行為をしたことや、インサイダー情報の提供で報酬を受け取っていたことがのちに発覚。
これによりBHAの調査が開始され、2011年に騎乗停止12年という実質的にキャリアの終焉を意味する極めて重い処分を受けることになりました。
事件の内容
事件の中心となった馬主グループは2009年1月17日から8月15日までの間に行われた合計10レースで自身の馬が負けることに賭けて不正に利益を得ていました。
その総額はおよそ28万ポンド(当時のレートで約4,060万円)と言われています。
ブックメーカーでは単勝とは真逆の「1着にならない馬を当てる」という馬券があるので、無気力騎乗を行うことで100%八百長を成功させることができます。
処分を受けた八百長関係者一覧
名前 | 立場 | 処分期間 | 内容 |
---|---|---|---|
Greg Fairley | 騎手 | 12年 | 意図的な敗退行為・内部情報提供 |
Paul Doe | 騎手 | 12年 | 〃 |
Kirsty Milczarek | 騎手 | 2年 | 内部情報提供・共謀 |
Jimmy Quinn | 騎手 | 6ヶ月 | 共謀 |
Maurice Sines | 馬主 | 14年 | 八百長首謀者 |
James Crickmore | 馬主 | 14年 | 〃 |
Liam Vasey | 協力者 | 5年 | 馬券購入 |
David Kendrick | 〃 | 4年 | 〃 |
Shaun Harris | 〃 | 3年 | 〃 |
Nick Gold | 〃 | 7年 | 〃 |
Peter Gold | 〃 | 5年 | 〃 |
八百長に関わった4人の騎手は容疑を否認、「無実を証明する」と述べていましたが、のちに関与していたことが明らかになりました。
無罪が証明された関係者
- Paul Fitzsimons(元騎手 → 調教師)
- Darren May(協力者)
Paul Fitzsimonsは事件当時は現役騎手で10レース中1レースに関与したとされていましたが無実が証明されました。
BHAのポール・スコトニー氏は最後に「今回の事件の規模と複雑さは、BHAの歴史上前例がない」とコメントしています。
G.フェアリーは樹木伐採業への転身

G.フェアリーはBHAより正式な処分が決定する前に現役を引退し樹木伐採業へと転身。
その後は長らく競馬界からは身を引いていましたが、2021年からはサンディ・トムソン調教師のもとで調教騎乗を再開させています。
そして、復帰へ ― 厳しい審査と条件付きライセンス
騎乗停止12年の処分は2023年12月に満了。2024年に騎手ライセンスの再申請を行いましたが却下。
翌年の5月に再び申請をするとライセンス委員会は「今回のケースは非常に判断が難しかった」と難航する協議だったことを明かすも「G.フェアリーが現在、信頼に足る人物である」と結論づけました。
信頼性についてライセンス委員会は「彼がこの12~13年の経験を経たことで、今後不正に関与する可能性は極めて低く、規定に違反することも考えにくい」とコメントしています。
ただしBHAは複数の条件を付けており、今後もG.フェアリーの動向を厳しく監視していく方針とのことです。
本人のコメントと周囲の反応
G.フェアリー
「15年前、自分は間違った道を選び、正当な代償を払ってきた。再びチャンスをもらえたことに心から感謝している」と声明を発表。
また調査に協力せず競馬界から去ったのは「自分や家族に対して脅迫めいた言葉が届くようになったため、安全を優先すべく姿を消した」と当時について語っています。
ジョンストンファミリー
かつての主戦厩舎ジョンストンファミリーからも「彼はしっかり罰を受け、成熟した人物になった。再起への勇気を称えたい」とエールが送られています。
復帰時期は未定も夏頃が有力
正確な復帰時期は決まっていないものの、英メディアは7月中の復帰が有力と報じています。
2007年に「見習いチャンピオン」の座を争ったウィリアム・ビュイック騎手は、現在では世界トップクラスの騎手へと成長。
もし順調にキャリアを歩んでいれば、G.フェアリーも世界を舞台に活躍していたかもしれません。
15年の時を経て、再びどのような活躍を見せるのか、多くの関係者やファンの注目が集まっています。
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