2023年7月5日、イギリスのウスター競馬場で行われた障害競走で、不可解なレースがありました。
最終障害を飛越して楽な手応えで先頭に立ちかけたにもかかわらず、騎手は追う動作を一切せず、結果3着に敗れました。
それから2年以上が経過した今月、元騎手ディラン・キッツ氏は「競走馬を最良の着順に導くことを妨げた」と懲戒委員会で認定されました。
事件の概要
このレースで3着に終わったのはD.キッツ氏が騎乗したヒルシン。本来なら勝てる力を持っていたと見られています
レース後に行われた調査の結果、騎手と外部関係者が共謀して馬を意図的に止めていたことが明らかになりました。
関わった人たち
- ディラン・キッツ(当時24歳の騎手)
レース中に意図的に競走馬を止めたことを認め、「人生で最悪の決断だった」と証言しました。この件を最後に競馬界を離れています。 - ジョン・ヒギンズ(79歳、馬主の知人)
騎手に「勝たせるな」と指示したと認定されました。体調不良で審問には出席せず、電話記録も提出しませんでした。すでにBHA(英国競馬統括機関)の排除リストに載っています。 - クリス・オナー(調教師)
八百長への関与は認められませんでしたが、レース後の審問で「馬が内にささって騎手が追えなかった」と虚偽の説明をしたことが判明。委員会は「若い騎手をかばったのだろう」と判断しました。
J.ヒギンズはプレミアリーグのサッカー選手アシュリー・バーンズ氏の義父であり、馬主アラン・クレッグ氏の知人です。
なお、馬主であるA.クレッグ氏は英国競馬統轄機構(BHA)から告発されませんでした。
A.バーンズ氏もJ.ヒギンズとともに電話記録の提出を拒否したため、同リストに加えられています。
動機はいまだ不明
D.キッツ氏は「ヒギンズに脅されて従った」と証言しましたが、懲戒委員会は「指示を拒む十分な機会があった」と結論づけました。
また不自然な賭けや金銭の授受も確認されず、なぜ「意図的な敗退」を指示したのか、その動機はいまだ不明です。
競馬界への影響
BHAの声明:英国競馬の成功の根幹は、競馬ファンが「競馬はクリーンで公正である」と信じられることにあります。
この種の案件が重大なのは、その信頼を根本から揺るがすからです。関与者の行動は英国競馬の価値観と相容れず、全国で公正な競争に人生を捧げている何千人もの人々への侮辱です。
この結論は、我々の競技が決してこのような行為を容認しないことを示すものです。
制裁に関する審理は11月に行われる予定で、関与者には長期の資格停止や永久追放といった厳しい処分が科される見込みです。
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